池島炭鉱、第一立坑の謎(1)
九州、長崎県に平成18年まで操業していた松島炭鉱(株)池島炭鉱がある。この炭鉱には四つの立坑*1があった。
第一立坑、第二立坑。鉱区*2の拡大により換気目的で作られた蟇島*3入気立坑、排気立坑である。第一・第二立坑は運搬を目的として作られたものであり、今回取り上げる第一立坑にも三段の籠をもつ運搬用のエレベーターが設置されている。
この第一立坑、特徴的な点として運搬(用)立坑に加えて排気(用)立坑をも兼ねている点である。
通常、運搬立坑はほとんどの場合で入気である。理由として、運搬立坑は人や石炭を積んだトロッコを出し入れするレールを敷く関係上、それなりに立坑の地上の開口部周辺が開放的である必要がある。
入気の場合、雑に言えば穴を開ければ自然に空気を取り込むので設備を揃える必要も無い*4のだが、排気の場合はそうはいかないのである。
排気立坑は地下深くの坑道から汚れた空気を吸い上げるために大型の扇風機を備えている。
運搬を兼ねた立坑の場合、立坑の開口部は運搬機器で占領されているため、図のように少し離れた場所に扇風機を設置、風洞と呼ばれるトンネルを伸ばし、立坑に接続するのである。この接続場所は立坑の地上開口部から少し下がった場所になる。そのため、なんの対策も行わない場合は地下深くの坑道から空気を吸い上げず、距離が近い地上から空気を吸い上げてしまう、と全く無意味なことになってしまう。
それを防ぐためには地上の運搬設備、立坑やぐらごと全体を覆い、気密する必要があるため建設・管理コストが凄まじいことになるので、運搬排気立坑はあまり存在しないのである。
しかし、この第一立坑は建屋全体を密閉し気密するのではなく、ドイツよりもたらされたエアーロック設備を日本で初めて導入*5したことにより主にコスト面の問題が緩和されたのである。
このエアーロック方式は主なメリットとして
- 広大な気密室を必要としないため安価である
- 地上部の建屋を明るく、かつ湿気を少なく出来る
- 地上部のトロッコのレールの配線の制限が無くなる
……などがある。
デメリットとしては
- エレベーターの籠の重量が増す
- 籠が変形した場合の交換は地底で行わなければならない
- 二段以上の籠に同時に人員を乗降させることが出来ない
- 立坑そのものの点検作業が制限される
- エアロックのドアの開閉上、運転サイクルが伸びる
- エアロックの開閉で人員が急激な気圧変化に襲われる
がある。
……これ、メリット以上にデメリットが多くて初期投資は少なくても数年でランニングコストが越えてきそうな気も……
「池島」と言う狭い島中な立地条件的に多少なりとも面積を少なく出来るエアーロック方式を選んだ…………のかなぁ。
さて、本記事のタイトルにある謎に触れていこうと思うのだが、すでに一枚目の写真にソレは写っている……
お前、メインロープのかかり方、おかしくねぇ!?
(続きます)